■当該
■部分
■原告
原告Bの手記に続けて項を改めること なく記述されているから,VWの記述であるか明らかでない上,末尾に 「(戦記終わり)」との記載があり,「二,手記『戦斗記録』(B)」の一 部を形成するものと認めるのが相当である。
自らの手記を「B氏の手記」 と表現することは原告Bが記載したとすれば不自然といえなくもない が,それはSの言動を表現した部分として理解すれば理解できなくはな い。
また,VWは,冒頭の紹介部分で,「なお,手記は後半に『戦後の 苦悩』と題をあらためて,戦後,同問題をめぐって氏の周辺で起きた事 柄の経緯を述べているが,紙幅の関係と,また論点を明確にする上でも, 『戦斗記録』のみに絞って,後半部分は割愛させていただいた。
」とし ており,当該部分がVWの評価とすると,この断り部分と齟齬する面が 出てくる。
(エ) 結局,「沖縄史料編集所紀要」(甲B14)は,文献的価値として は,原告Bの手記を掲載したことに意義を見出し得るにすぎないと認め られる。
(オ) ところで,これに関連して,昭和61年6月6日付けの神戸新聞に, - 181 - VWの談話として「Sさんらからも何度か,話を聞いているが,『隊長 命令説』はなかったというのが真相のようだ。
」「B命令説については 訂正することになるだろう。
」との記載がある(甲B10)。
これについては,VW自身が,「私は神戸新聞の記者から電話一本も らったことはない。
おそらくB氏の言い分と私の解説文の一部をまぜあ わせて創作したのであろうが,誰がみても事実と矛盾する内容で,明白 なねつ造記事である。
」などとしており(乙44及び45),前記神戸 新聞の記事は,「沖縄史料編集所紀要」(甲B14)についての原告ら の主張同様,VWの認識を示すものとは,およそ言い難い。
カXIらの体験談 (ア) 「沖縄県史10巻」(乙9・765頁)に記載されたXIの集団自 決に関する体験談中,事実を述べる部分で主なものとしては,恩納川原 で米軍の攻撃を受けたこと,そこに防衛隊が現れたこと,XIも参加の 上,村長・校長・防衛隊員ら渡嘉敷村の有力者が何らかの協議をしたこ と,防衛隊員が住民に手榴弾を配布したこと,村長が何か言っていたこ と,その後,住民が手榴弾を用いるなどして自決したこと,西山陣地に 行ったものの,軍が陣地内に入れてくれなかったことなどであり,これ らの事実は,D命令説を覆すものではない。
そのほか,XIの体験談の記載は,村の有力者の協議内容や村長の発 言が明らかでないなど,あいまいな部分があり,また,「防衛隊とは云 っても,支那事変の経験者ですから,進退きわまっていたに違いありま せん。
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」「そういう状態でしたので,私には,誰かがどこかで操作して, 村民をそういう状態に持っていったとは考えられませんでした。
」など の部分は,XIの推測を述べたものにすぎない。
(イ) 「沖縄県史10巻」(乙9・781頁)に記載されたXHの体験談 も,D大尉が部下を指揮できなかったという事情について具体性はなく - 182 - (XHの体験談以外にD大尉が部下を指揮できなくなっていたと語るも のは,本訴で提出された書証等の中には存しない。
),多くはXHの観 測を述べるものにとどまっている。
キ「秘録沖縄戦記」 「秘録沖縄戦記」は,平成18年に復刻版(甲B53)が出版されて おり,復刻版では,D大尉が自決命令を出したとする記述が削除されてい る。
しかしながら,VDの長男であるYMの記載した復刻版のはしがきに よれば,復刻版は,VDの死後に復刻出版されたものであると認められ, また,「一渡嘉敷村民の集団自決」の章に先立って,「本復刻版では『沖 縄県史第10巻』(一九七四年)ならびに『沖縄資料編集所紀要』(一九 八六年)を参考に,慶良間列島における集団自決等に関して,本書元版の 記述の一部を削除した。
集団自決についてはさまざまな見解があり,今後 とも注視をしていく必要があることを付記しておきたい。
」との記載がな されている。
こうした記載を踏まえると,第4・5(2)ア(ア)e及びh記載のとおり, 自己の体験や,終戦の翌年沖縄警察部が行った戦没警察官の調査の際に収 集された数多くの人の体験談や報告,琉球政府社会局長時代の援護業務の ために広く集めた沖縄戦の資料などに基づいて執筆されたとする「秘録 沖縄戦史」及び「秘録沖縄戦記」の作者VDがD命令説についての見解 を改めたのではなく,D命令説に反対する見解の存在又は沖縄戦の認識を めぐる紛争の存在を考慮して,復刻版を出版した遺族であるYMが慎重な 態度をとったにすぎないものと認められ,「秘録沖縄戦記」の復刻版で D大尉が自決命令を出したとする記述が削除されていることで,「秘録 沖縄戦史」及び「秘録沖縄戦記」の資料的価値に変更を認めることはで きない。
クその余の文献の評価 - 183 - (ア) YBは,第4・5(2)ア(イ)f(b)のとおり,週刊新潮のコラムに おいて,座間味島の集団自決について概ね原告Bの供述に沿う事実経過 を記載しているが,第4・5(2)ア(イ)f(b)で判示したとおり,その 記載内容から原告Bに対する取材や前記神戸新聞の記事等に基づく見解 にとどまり,原告Bに対する取材を除き,YBが生き残った住民等から の聞き取りを行ったものとまでは認められないから,後記第4・5(5) ウのとおり,原告Bの供述等が措信し難い以上,その資料的価値は乏し いというほかない。
(イ) 陣中日誌(甲B19)は,その中に掲載された「編集のことば」に よれば,第三戦隊本部付であったYEが基地勤務隊YN中尉が記録した 本部陣中日誌と昭和20年4月15日から同年7月24日までを記録し た第三中隊陣中日誌をもとに,昭和45年8月15日に編集,発行した ものであるとしている。
折しも,D大尉が渡嘉敷島を訪れた際に抗議行 動が起こり,そのことが報道されたのが同年3月であるところ(甲A4 ないし7),「陣中日誌」は,このような報道後,同年8月15日に発 行されたものであるし,その元となった資料は書証として提出されてお らず,その転載の正確性を確認できない。
(ウ) 戦史研究家であるYFが執筆した「花綵の海辺から」には,第4・ 5(2)イ(イ)のとおり,「D隊長が『自決命令』をださなかったのはた ぶん事実であろう。
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